投資信託の隠れコストとは?

2024年から始まるシンNISAに向けて,投資を始めた方・これから投資を始めようとしている方が増えてきました.特に,長期保有を目的とした一般の投資家には,インデックスファンドなどの「低コスト」のファンドが好まれます.そのため,企業間でも信託報酬の引き下げが競って行われています.

実は,投資信託の信託報酬(運用管理費用)には,実際に運用した際に発生する費用があります.これが通称「隠れコスト」と呼ばれるものです.今回は,隠れコストを確認する方法と大人気ファンドの実質コストについてご紹介いたします.
基本的に隠れコストは,それほど気にしなくても大丈夫です!
隠れコストについて
隠れコストとは
証券会社で投資信託を購入する際には,管理費用(信託報酬)が確認できます.例えば,オルカンの場合,0.1144%と表示されています.
しかし,実際には信託報酬に加えて,「販売委託手数料」,「有価証券取引税」,「その他費用」が発生しています.これが「隠れコスト」と呼ばれるものです.実際に発生する隠れコストは投資信託ごとに異なりますが,ざっくり0.02%~0.06%くらいと考えて良いと思います.
確認する方法
隠れコストを把握するためには,「運用報告書」を確認する必要があります.運用報告書は,文字通り,ファンドを運用した結果についての報告書で,基準価格の推移や変動要因,投資環境,費用明細などが記載されています.基本的には,1年に1回発行されます.
運用報告書の費用明細を見ると,項目ごとに,実際に発生した費用が確認できます.「信託報酬」以外に発生している費用が,隠れコストです.
大人気ファンドの実質コスト
実質コストとは,事前に公表されている「信託報酬」に「隠れコスト」を加えた費用のことです.それでは,実際に発生している実質コストについて,以下の2つを例に確認してみましょう.
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):オルカン
データは,第4期(2021年4月21日~2022年4月25日)運用報告書より一部抜粋しました.なお,先日,信託報酬率の引き下げが発表されたため,今後は本運用報告書の数値よりも,信託報酬率は下がるものと考えられます.
投資目論見書の信託報酬は0.114%に対して,実質コストは0.170%となります.
項目 | 比率(%) |
(a) 信託報酬 | 0.114 |
(信託会社) | (0.045) |
(販売会社) | (0.046) |
(受託会社) | (0.022) |
(b) 販売委託手数料 | 0.007 |
(株式) | (0.005) |
(先物・オプション) | (0.002) |
(c) 有価証券取引税 | 0.012 |
(株式) | (0.012) |
(d) その他費用 | 0.037 |
(保管費用) | (0.029) |
(監査費用) | (0.003) |
(その他) | (0.005) |
合計(実質コスト) | 0.170 |
※期中の平均基準価額は,15,944円です.
楽天・全世界株式インデックス・ファンド:楽天VT
楽天VTの仕組みは,楽天VTを通して,VT・VTI・VXUSなどに間接的に投資する商品です(ファミリーファンド方式).したがって,このファンドで発生する費用に加えて,投資先のファンド(VT・VTI・VXUS)の管理費用が発生します
データは,第5期(2021年7月16日~2022年7月15日)運用報告書より一部抜粋しました.投資目論見書の信託報酬は0.1999%程度に対して,実質コストは0.228%となります.
項目 | 比率(%) |
(a) 信託報酬 | 0.132 |
(信託会社) | (0.055) |
(販売会社) | (0.055) |
(受託会社) | (0.022) |
(b) 販売委託手数料 | 0.002 |
(投資信託証券) | (0.005) |
(c) 有価証券取引税 | 0.000 |
(d) その他費用 | 0.024 |
(保管費用) | (0.014) |
(監査費用) | (0.002) |
(印刷費用) | (0.001) |
(その他) | (0.007) |
合計 | 0.158 |
このファンドの経費率 | 0.158 |
投資先ファンドの経費率 | 0.070 |
総経費率 | 0.228 |
※期中の平均基準価額は,15,900円です.
感想
基本的にはファンドの隠れコストは,気にしなくても大丈夫だと思います!資産運用の全体としては,隠れコストの影響は小さいので,「隠れコスト」というものが発生するということを知っている程度で問題ありません.
実質コストで見ると,オルカン0.170%と楽天VT0.228%では,0.058%の差ですね.信託報酬の差よりは小さくなっていますが,これを大きな差と考えるのか,小さな差と考えるのか.
私は,既に,楽天VTなどを保有している方は,コストを減らすためにオルカンなどに乗り換える必要はないと考えます.税金というコストが発生しますので.そもそも,1日の値動きで1%変動する日も珍しくありませんからね.
インデックス投資を実践している方であれば,「ほったらかし」や「つみたて」を行っている方が多いと思います.そのような投資スタイルであれば,日々の値動きを確認する必要はありませんが,年に1回発行される「運用報告書」は確認されると良いと思いますよ.
「ある程度」のコストや利益で納得することが投資において,重要だと考えています.「ある程度」は80点くらいのイメージですかね.100点を目指すことは,困難で,効率が悪くなるからです.
80点くらいで納得して,継続することが大切ですね.投資以外のことにおいても,同じことが言えるかもしれませんね.
以上,参考になれば嬉しいです.
本コラムの内容は,資産形成に関する情報提供を目的としたものであり,証券投資の勧誘を目的としたものではありません.また,本情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切責任を負いません.最終的な投資決定は,ご自身の判断でなさるようにお願いいたします.