赤ちゃんが不足しやすい栄養素「鉄分」!重要性と補う方法を解説!
赤ちゃんの離乳食・補完食がスタートすると,
- そもそも,鉄分が不足すると,どうなるの?
- 赤ちゃんに必要な鉄分量ってどれくらい?
- 母乳から鉄分を摂取できる?
- レバーが鉄分豊富と聞くけど,他の食材にも含まれているの?
- 離乳食・補完食だけでは,必要な鉄分量を取れないときは?
といった疑問・質問を耳にすることがよくあります.さらに,妊娠中・授乳中のママさんも積極的に鉄分を摂取する必要があると,病院で言われませんでしたか?
そこで,今回は,鉄分の役割や必要な摂取量,さらに鉄分含む食材と効率的な摂取方法について解説します.また,赤ちゃんも食べられるオススメの鉄分強化食材についてもご紹介します.
赤ちゃんの健康的な成長のために,鉄分の重要性を理解し,バランスの取れた食事づくりに役立てましょう!
鉄分とは
鉄分の役割
乳幼児期に鉄分が不足すること,神経系・運動系の発達に悪影響を与える可能性が指摘されています.さらに,貧血にもつながるため,積極的に鉄分を摂取することが推奨されています.
鉄分は,体内に酸素を運ぶヘモグロビンを作るために必要な栄養素です.したがって,鉄分が不足した状態が続くと,「鉄欠乏性貧血」になります.症状としては,疲れやすい・息切れしやすい・めまいがするなどがあります.しかし,赤ちゃんはそのような症状を伝えることができませんので,より注意が必要です.
1日に必要な鉄分の目安
表1と表2に乳幼児期と妊娠中・授乳中に必要な鉄分量の目安を示します.データの詳細や算出根拠などは,出典元をご確認ください.
男児 | 女児 | |||
年齢・月齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
6~8カ月 | 3.5 mg/日 | 5.0 mg/日 | 3.5 mg/日 | 4.5 mg/日 |
9~11カ月 | 3.5 mg/日 | 5.0 mg/日 | 3.5 mg/日 | 4.5 mg/日 |
1~2歳 | 3.0 mg/日 | 4.5 mg/日 | 3.0 mg/日 | 4.5 mg/日 |
3~5歳 | 4.0 mg/日 | 5.5 mg/日 | 4.0 mg/日 | 5.5 mg/日 |
6~7歳 | 5.0 mg/日 | 5.5 mg/日 | 4.5 mg/日 | 5.5 mg/日 |
推定平均必要量 | 推奨量 | |
妊婦:初期 | 7.5 mg/日(+2.0 mg/日) | 9.0 mg/日(+2.5 mg/日) |
妊婦:中期・後期 | 13.5 mg/日(+8.0 mg/日) | 16.0 mg/日(+9.5 mg/日) |
授乳中 | 7.5 mg/日(+2.0 mg/日) | 9.0 mg/日(+2.5 mg/日) |
※1 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
母乳には鉄分は含まれていない⁉
実は,母乳には微量の鉄分が含まれていますが,その濃度は低いとされています.つまり,母乳だけで赤ちゃんの成長に必要な鉄分を摂取することは難しいと考えられています.
ただし,母乳育児の方も心配いりません.赤ちゃんは,母体にいる間に「体内で蓄えた鉄分」があるため,生まれた直後から6カ月頃までは外部から鉄分を摂取する必要はありません.しかし,蓄えた鉄分は,6カ月頃には使い切ってしまうため,離乳食・補完食をスタートして食事などから鉄分などの栄養素を摂取する必要があります.つまり,足りない分を食事(離乳食・補完食)から補う(補完する)必要があります.
鉄分を食材から取るための工夫
本コラムでは,鉄分について着目していますが,当然ながら,鉄分だけでなく,バランスの良い食事を心がけることが大切です.
・食材に含まれる鉄分
表3に主な食材に含まれる鉄分の一覧表を示します.データの詳細や算出根拠などは,出典元をご確認ください.
項目 | 鉄分量(可食部100 g当たり) |
ヘム鉄(動物性食品) | |
豚レバー | 13.0 mg |
鶏レバー | 9.0 mg |
牛肉(赤身) | 2.5 mg |
豚(赤身) | 0.7 mg |
鶏むね | 0.4 mg |
鶏もも | 0.9 mg |
卵(全卵):2個相当 | 1.5 mg |
卵(卵黄):5個相当 | 4.7 mg |
まぐろ | 2.0 mg |
かつお | 1.9 mg |
ぶり | 1.3 mg |
鮭 | 0.5 mg |
鱈(たら) | 0.4 mg |
非ヘム鉄(植物性食品) | |
オートミール(乾燥状態) | 3.9 mg |
納豆:2パック相当 | 3.3 mg |
小松菜 | 2.1 mg |
ほうれん草 | 0.9 mg |
かぼちゃ | 0.6 mg |
さつまいも,じゃがいも | 0.5 mg |
なす | 0.3 mg |
だいこん | 0.2 mg |
たまねぎ | 0.2 mg |
トマト | 0.2 mg |
にんじん | 0.2 mg |
いちご | 0.3 mg |
りんご | 0.1 mg |
※2 出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
ざっくりと,まとめると,100 g当たり,赤身の肉・魚で1~2 mg,野菜で0.2~0.3 mgを摂取することができます.
例えば,6~8カ月の赤ちゃんに推奨される5.0 mg/日を食品から摂取しようと考えると,赤身の肉・魚を200 g,野菜を200 g以上,1日で食べる必要があります.1日3食にしても,それぞれ70 g食べる必要があります.これは現実的ではありませんね.
・鉄分を効率よく吸収するためには
鉄分を効率よく吸収するためには,以下のポイントに注意することが大切です.
吸収されやすいヘム鉄を優先する
鉄分には2つの形態があり,ヘム鉄は動物性食品(肉・魚など)に多く含まれており,非ヘム鉄は植物性食品(豆類・穀物など)に多く含まれています,ヘム鉄は良好に吸収される一方で非ヘム鉄は吸収が制限される傾向があります.
ビタミンCを一緒に摂取する
ビタミンCは鉄分の吸収を促進する作用があります.鉄を含む食品を摂る際には同時にビタミンCを含む食品や飲み物を摂取すると良いでしょう.
タンニンを制限する
タンニンは,紅茶・コーヒー・赤ワインなどに含まれており,鉄分の吸収を妨げることがあると言われています.食事中に,これらの飲み物を摂る場合は,鉄分の吸収を妨げられる可能性があることを覚えておいてください.
フィチン酸・オキサレ酸を低減する
フィチン酸・オキサレ酸は,穀物・レンズ豆・ひじきなどに含まれており,鉄分の吸収を妨げることがあります.これらの食品を摂取する場合は,加熱など調理することで,これらの物質の影響を低減することができます.
鉄分を強化した食材
上述したように,赤ちゃんにとって1日に必要な鉄分量は多いと思います.大人であれば,バランスの良い食事を心がけることで十分に摂取可能ですが,赤ちゃんの場合は,食事だけで推奨される鉄分量を摂取することはかなり難しいと思います.
そこで,鉄分を強化した食材を上手に取り入れることが重要になります.離乳食・補完食を始めたばかりの赤ちゃんの場合には,食べられる食材や量が限られていますので,「粉ミルク」がおすすめです!その他にも,おやつ(捕食)にも取り入れやすい「おすすめの鉄分強化食材一覧」をご紹介いたします.ただし,「取り過ぎ」には注意してくださいね.
おすすめの鉄分強化食材一覧
まとめ
赤ちゃんが不足しやすい栄養素である「鉄分」について,その重要性と効率的な摂取方法のまとめです.
- 赤ちゃんは,鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血や神経系・運動系の発達に影響を与える可能性があります.そのため,鉄分は意識して摂取したい栄養素の1つです.
- 母乳には微量の鉄分が含まれていますが,赤ちゃんの成長に必要な量を摂取するのは難しいと考えられています.赤ちゃんは,始めのうちは,母体にいる間に蓄えた鉄分を利用しますが,6カ月頃からは食事からの摂取が必要になります.
- 鉄分を効率的に摂取するためには,ヘム鉄を含む動物性食品やビタミンCを摂取することが有効です.一方で,タンニンやフィチン酸・オキサレ酸などは控える必要があります.
- 1日に必要な鉄分量を食事だけで摂取することが難しい場合には,鉄分を強化した食材を上手に取り入れることが重要です.離乳食・補完食の開始から利用できる鉄分強化食材として「粉ミルク」がおすすめです.
補完食やBLWなど赤ちゃんの食事に関する記事はコチラからご覧いただけます.
以上,参考になれば嬉しいです.